【やちむんの使い方】
【沖縄の焼き物やちむん】その特徴と長持ちする使い始め方
沖縄の伝統的な製法で作られる「やむちん」は、土のもつ自然な風合いと色合いが人気の焼き物(陶器)です。近年では、沖縄を訪れる観光客にも非常に人気の高いお土産のひとつにも数えられます。
そんなやむちんですが、購入後のお手入れにひと手間を加えることで、さらに長持ちすることはご存知でしょうか?せっかく購入したやむちんが「すぐに欠けてしまった」「割れてしまった」「変色した」などのトラブルに見舞われる前に、ぜひこれからご紹介するお手入れ方法を取り入れていただければと思います。
【目次】
1.やむちんの歴史と特徴
2.やむちんは使い始めが肝心
3.やむちんのお手入れ方法 ―目止めの手順―
4.目止め効果をさらに長持ちさせる やむちんの使い方テクニック
5.やちむんのお手入れ方法
6.おわりに
1.やむちんの歴史と特徴
やむちんの誕生には諸説ありますが、約400年ほど前だといわれています。中国や朝鮮半島といった諸国からの影響を受けつつ、琉球王国時代より発展してきました。
やむちんのぽってりとした厚みは、沖縄の土からもたらされた赤土の優しくも力強い風合いを感じさせ、絵柄も海や植物などのモチーフが多く取り入れられていることから沖縄らしさを醸し出しています。「沖縄に来たら、やむちんを買いたい」という観光客のみならず、沖縄の地元民にとっても生活と深く結びついています。
一般的に、陶器は「土もの」と呼ばれ、その土地の持つ特徴をよく表すといわれています。やむちんの場合も同様で、「土味(やさしい風合い)」があることが大きな特徴となっています。その反面、多孔性があるため吸水性があり、醤油や油分などの汚れを吸収しやすい傾向があります。とはいえ、和の器においては使う過程で自然につく着色やシミをある種の味わいと見なす考えもあります。
「末永く使える」という点ではやむちんの品質に変わりはないので、安心してお使いいただければと思います。
2.やむちんは使い始めが肝心
自然由来の原料でつくられる陶器には、目には見えない小さな気泡の穴(ピンホール)やヒビ(貫入)があります。料理に含まれる水分、煮汁、油分がそれらに入り込むことで汚れや匂いなどが落ちにくくなります。また、釉薬がかかっていない素地からも汚れは吸収されます。
そこで、やむちんを購入されたら、まずはご使用される前に「目止め」の処理をすることをおすすめしています。汚れが気泡に入り変色することを防いでくれるだけでなく、やむちん本来の発色が長持ちする効果もあるためです。
ただし目止めを行ったからといって、シミや変色を完全に防ぐことはできません。あくまでも何も施さないよりも良い状態で保てるという意味になります。
3.やむちんのお手入れ方法 ―目止めの手順―
それでは、やむちんの使い始めとして行う「目止め」の方法についてご紹介します。
目止めとは?
お米のとぎ汁にやむちんの器を浸し、全体をとぎ汁に含まれるデンプン質でコーティングすることで、料理に含まれる水分や油分、匂いなどが気泡やヒビに染みこむのを防ぐシールドのような役割を担ってくれます。
いつ目止めをすればいいのか?頻度は?
やむちんをご購入後、ご使用前に行うことをおすすめしています。面倒に感じられるかもしれませんが、このひと手間でやむちんを長くお使いいただけるようになります。
最初の目止めをしてからは、器の使用頻度にもよりますが、数か月から半年に一度はメンテナンスとして目止めを行うことをおすすめしています。
目止めが面倒ですが、やらなくても大丈夫?
もちろん使い始めに目止めを施さなくても、そのままお使いになることはできますが、ご購入時の発色や風合いをなるべくキープされたい場合は、やはり目止めをした方が良いでしょう。
目止めの方法
ここでは、一般的なお米のとぎ汁を使った目止めの方法をご紹介します。
【用意するもの】
・購入したばかりの器
・お米のとぎ汁(濃いめがおすすめ)
・(必要に応じて)白飯
・鍋(器が十分入る、大きめのサイズがおすすめ)
<1>鍋に器をそっと入れます。そこに器が完全に浸かる程度までお米のとぎ汁(常温)を注ぎます。
★POINT★
お米のとぎ汁の濃度は白く濁る程度で、鍋に注いだ時に底が見えないくらいが理想的です。もし「薄いかも」と感じたら、炊いた白飯を大さじ1〜3杯ほど追加して濃度の調整してください。また、とぎ汁は必ず常温の状態から器を入れるようにします。(沸騰後に器を入れて煮ると破損の原因になります。)
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<2>コンロに鍋をセットし、ガスの場合は中火(IHの場合は中程度で調整)にします。いきなり温度を上げ過ぎないように沸騰させます。
★POINT★
沸騰で出る大きな泡で器同士が動いてぶつからないように気をつけましょう。沸騰した後は弱火に下げて、そのまま15〜20分ほど煮沸します。この時のとぎ汁の状態は、薄めのおかゆのようになっている状態がベストです。
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<3>所定の時間で煮沸した後、火を止めて、とぎ汁に器を浸けたまま完全に冷めるまで数時間放置します。(所要時間は季節によって変わります。)
★POINT★
冷却する際、いきなり水道水などをとぎ汁に注ぎ足して冷ますのはNGです。器を急冷させることで破損する恐れがあります。
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<4>鍋のとぎ汁が完全に冷めたら器を取り出し、水道水でぬめりが完全に取れるまで洗い流します。清潔な乾いた布巾で器に付いている水分をすっかりと拭き取り、その後さらに自然乾燥をさせます。
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4.目止め効果を長持ちさせる やむちんの使い方テクニック
肉眼では見えないレベルの気泡やヒビをコーティングし、日常使いをしやすくしてくれる目止めですが、その後の器の使い方を少し工夫するだけでも持続効果が変わってきます。
ここでは目止め効果を長持ちさせてくれるテクニックをご紹介します。
テクニック[1]使用前、器を水に浸しておくことで汚れ移りを防げる
使用前のひと手間として、料理を盛り付ける前に器全体を水に浸け置きします。10分ほど経ったら取り出し、乾いた布巾で拭き取り料理を盛り付けます。料理に含まれる水分、油分、匂いなどが器に染みこむのを防いでくれます。
★POINT★
時間がない時は流水で軽く器の表面をくぐらせたり、ぬるま湯に浸けたりするだけでも良いでしょう。
テクニック[2]長い時間、料理を乗せない
長時間、料理を盛り付けたままの状態でおくと、食べ物に含まれる水分、油分、匂いは器に染みこみやすくなります。食事がお済みになられたら、すみやかに器を下げて洗うようにしましょう。
5.やちむんのお手入れ方法
食器洗い用洗剤を薄めて、やさしく洗う
せっかく施した目止めですが、使用の度に少しずつ取れていくことは避けられません。器を使用したら、食器洗い洗剤をそのまま使わず、洗剤を水で薄めた状態でなるべくやさしく洗います。ゴシゴシとこすり洗いをすると目止めでコーティングした膜は取れてしまうので、力を入れ過ぎないことがポイントです。
万が一、シミや匂いがついてしまった時の特別なお手入れ
料理を長時間のせたままにした結果、器にシミや匂いがついてしまったら、重曹を使ってお手入れをしましょう。
目の細かい柔らかめのスポンジに水と大さじ1杯の重曹をのせて、気になるシミの箇所をやさしくクルクルこすりながら洗います。一度で取れない時は、同じ分量の重曹を使って繰り返してみます。この工程でおおよそのシミは取ることができます。
上記の方法でも取れない場合は、鍋にたっぷりの水と重曹を入れて溶かして重曹水を作り、器を入れて30分ほど中火で煮沸し、冷めた後に再びスポンジで洗います。
料理をのせたままの状態にするのはNG。シミ・匂いのもとに
残った料理をのせた状態で冷蔵庫に保冷したり、汁物をそのまま保存したりするのは、なるべく避けた方が良いでしょう。シミや匂いが染みこみ、洗っても取れにくくなります。
洗った後はしっかり乾燥させてから、食器棚に片付ける
やむちんを洗った後は、表面のみならず内部まで浸透している水分が完全に蒸発して無くなるまで、しっかりと自然乾燥をさせましょう。
食器棚にしまう時は紙をはさんでキズを防げる
器を重ねて食器棚にしまう時は、紙やビニールシートなどを緩衝材かわりに挟むと良いでしょう。器の欠けやキズを防ぐことができます。
6.おわりに
やむちんに限らず、陶器は使い始めにひと手間がかかりますが、日頃のお手入れを通じて器への愛着も深まっていく点が魅力でもあります。
沖縄で生まれた陶器であるやむちんは、大切にお使いいただくことで10年20年と末永くお使いいただける器です。まるで家族の一員のように毎日の食卓に並ぶ光景は、温かく心豊かなものにもなることでしょう。
これからも、やむちんを手に取ってくださった皆さまの日々に彩りを添える一助になれば、作家としてこの上ない喜びでもあります。
やむちんと素敵な出会いがありますように。
お読みいただき、ありがとうございました。
datta.沖縄南の島陶芸工房 大岩 浩章 拝
※商品によって「電子レンジ対応」「食洗機対応」している食器があります。
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