<虹の写真>~後編~ 読みもの
≪小さな物語≫
本日は <虹の写真> ~後編~ です
なぜ、今
学生時代の頃の思い出が
鮮烈に蘇ってくるのだろう…。
私は
お気に入りのマグカップで
インスタントコーヒーを
飲みながら、
ぼんやりと思い出に浸っていた。
こうして、学生の頃の
特にアイツとの出来事を
思い出すことが
最近よくある。
アイツは
今どうしているんだろう…。
地方出身だったアイツは卒業と同時に
地元へと帰っていった。
私は自宅から
大学に通っていたから
そのまま離れ離れに
なってしまった。
卒業して2年ぐらいは
ちょくちょく連絡も
取っていたが
ここ最近は全く音信不通だ。
卒業してから、
2人の男性と交際した。
2人目の男性とは
結婚まで意識したものの
色々あってつい最近別れた。
両親は2人目の彼と
ゴールインすることを
期待していたようだったが
それが破局したため
突然焦り出して
「結婚する気はないのか?」
「誰も良い人はいないのか?」
としつこく
聞いてくるようになった。
だからだろうか。
最近アイツのことを
やたらと思い出す。
彼と別れて
寂しいからなのか
結婚を意識した時に
なぜかアイツの
顔が浮かぶのか
理由はよく分からないけれど
学生時代のアイツとの
思い出が次々に蘇り
これは一体なんなのだ…
と思っていた。
ふいに、解約した
昔の携帯電話を充電して
起動してみた。
アイツとの
メールを読み返す。
こんなこともあったなぁ、
とクスリと笑ってしまう。
そんな中、
あの虹の写真つきの
メールを見つけた。
読んでいると、
涙こそ出なかったものの
何か胸にこみ上げて
くるようなものがあった。
そう、
今だから白状できるが
私はとっくに気付いていた。
私は完全にアイツに
恋していた。
でも、アイツに
その気が無いのは
分かっていた。
だったら、
アイツに彼女が
いない時だけでも
アイツが拠り所に
してくれれば良いと
思っていた。
今、どうしてんのかな…
ふと、
そんなことを思った。
思ったものの
思っただけで、
私は眠りについた。
翌朝、
その日身に着ける
アクセサリーを
選ぼうとしたら、
アイツがくれた
お土産のピアスが
目に留まった。
陶器でできたピアスは
ゴロッとした
大ぶりなものだったので
社会人になり
オフィスへ行く時には
身に着けなかったが、
この日は何気なく手が伸びた。
ピアスに合うような、
それでいてフォーマルな
雰囲気の服を
見立てて家を出る。
昨夜は大雨だったようで、
日差しがあるものの
地面が濡れている。
太陽の光を浴びて
キラキラ光る地面から
視線を上げると、
青空に大きな虹がかかっていた。
「キレイ…」
思わずそう呟いて、
ハッとした。
これは何か、
示唆しているのかもしれない…。
このタイミング、思い出、メール、
ピアス、そして虹…。
私はスマホの
カメラを空に向けて
シャッターボタンを押した。
~おしまい~
(この物語はフィクションです)